リヤキャリパーのメンテナンス

<2025年9月>

今年5月の車検で、リヤブレーキの分解整備をやろうと思っていたのですが時間が無く、結局フルード交換だけにして終わらせてしまいました。
NAロードスターのリヤキャリパーは、構造上マメに分解整備をしておかないと固着してしまう恐れがあると言われているので、次回車検時に向けて今から準備しておくことにしました。

 

前回の車検時に考えていたのは、整備済みキャリパーを事前に準備して、使用していたキャリパーと交換する整備方法でした。
そのためにキャリパーも中古品を数年前に入手していたのですが、パーツの準備などに手間取り、結局やれず終いでした。
最近は時間に余裕も出来ましたし、キャリパーも手元にありますので、メンテナンスの準備を進める事にします。
写真はその中古キャリパーを洗浄し、分解、そしてシルバーの耐熱塗装で表面を簡単に塗り、整備を少し進めた時のものです。

 

左右一式で入手した中古キャリパー。
前に調べたところでは、NA6CとNA8C用のキャリパーは仕様が違うようですから、間違わないよう注意して探しました。
外側は少々汚れているものでしたが、分解してみると内部は比較的きれいな状態です。
手入れすれば十分に使えそうでしたので、内部の清掃や各パーツのグリスアップ、消耗品の交換等を行って使える状態まで持っていきます。
作業の流れ的には、2021年にメンテナンス をしていますので、今回のメモは前回の補足的なものになりそうです。

 

内部のパーツ。
パーツは少々傷み気味に見えますが、触って確かめますとそこまで悪くは無いような感じです。分解前にある程度新品パーツの準備はしていたのですが、今回は使えそうなものはなるべく再利用してみようと思います。組んでみて動きの渋さや、その後にフルード漏れが出るようなら、その時にまた交換すればよいと思っています。
仮りに今後パーツの交換が必要になった時でも、こういったパーツの新品はほぼ全てがメーカーから入手可能ですので安心です。

 

レバーやスプリング。
ちょっと傷み気味ですが、仮組した感じでは動きも悪くなく、もう少し使えそうな感じです。
このレバーも新品パーツがメーカーから供給されるようですが、左右で1万円越えですので、このまま再使用する事にしました。
参考までにレバーのパーツ番号:BR76-26-800B(R) BR76-26-810B(L) 

 

アジャスタースピンドル。
写真の矢印で差す「アジャスタースピンドル」ですが、これはサイドブレーキ機構に機能する部品となります。
調べてみると思ったより高く、2つで8千円くらいしました。品番:NA75-26-731
他のパーツに比べると結構高価です。先ほどのレバーや、このアジャスターが合わさって「キャリパーアッセンブリー」(今でも新品が買える)になるのですからキャリパーが高い理由も理解できます。

 

今回比較的安価だったので入手したものの、使わわなかったパーツを載せておきます。
サイドブレーキ用のスプリングです。左右で巻き方が違うので左右別番号です。

 

六角を入れてピストンを動かす穴のカバー用ボルトです。銅のワッシャーが組み込まれたボルトになります。
これは今回2個入手したのですが、傷んでいた側のみ交換しています。どうせなら両方交換すればよいのにちょっとケチ臭いですかね。

 

ピストンを動かすギヤです。

 

サポート部のスライドピンになります。
中古品に付いていたものが微妙な具合でしたので、念のため入手しています。
この新品パーツと比較したら、中古のパーツは傷みが目立ちます。でも再使用して試してみたいのでこちらは保管しておきます。

 

シールキットはミヤコ製を使います。
純正品より財布に優しいシールキットです。前回もこちらを使って整備しましたが、O/H後、4年使用しているキャリパーからも、フルード漏れ等の不具合も無い事を確認していますので、同じものを再度購入してみました。

 

組付け開始。
Oリングをセットしたアジャスタースピンドルをシリンダーに組み込み、スナップリングを使い固定しました。
ちょっと変わった構造でもある、NAロードスターのパーキングブレーキを動かすロッドとして使われます。

 

スナップリング。
このパーツは価格も安いし、新品を使っておいた方が良いかと思い、純正新品を使っています。
このキャリパーのメンテナンスには必須と言われる、特殊なリングプライヤーを使い組んでいます。

 

NAロードスターのキャリパー分解には欠かせないリングプライヤー。
先が曲がっていて長いリングプライヤーです。

 

ピストンのゴム。
シールキットに付属するラバーグリスを使いセットしています。

 

シリンダーにセット。

 

新品ピストン。
こちらも数年前に入手していた純正新品ピストンになります。
古いものも使えそうではあったのですが、黄色矢印部分(キャリパーから飛び出ている部分)に若干のサビがあったので交換する事にしました。
おそらくここで新品を組み込んでおけば、今後私が乗る間くらいは交換ぜずに持ってくれるのではないでしょうか。

 

以前はピストン単品は無かったとのことですが、レストアプロジェクトで再生産?もしくは新規設定されたパーツのようです。
「NA01-26-660」 パーツの生産はありがたいのですが、このピストンは構造が変わっている事もあり、ちょっと高いのが難点です。

 

手の込んだ構造のピストン。
新品だけに内部もとてもきれいです。

 

若干サビの出ていた古いピストン。
再使用も考えましたが、新品を準備していた事もあり、今回は交換する事にします。

ここからが面倒なピストンの組み込み作業。
前回2021年のオーバーホール時は、とても苦労してダストブーツを組付けています。
その時のメモでは「コツをつかめば比較的簡単に出来るようになる」と記していましたが、まだ4年位しか経っていないのに、要領をすっかり忘れていて、全く組み付ける事ができません。今回も前回同様に何度もやり直すことになってしまいました。
写真ではラバーグリス(オレンジ色)を少し内側に付けてしまっているのですが、これもうまくできなかった要因の一つです。滑ってしまいブーツが外れてしまうのです。

最終的に組み込みは出来たのですが、前回のメモが生かされなかったので、ブーツの入れ方のコツをもう一度しっかりメモしておきます。
まずはやってはいけない、もしくはやっても無駄な事から
・先にキャリパー本体にブーツをセットして、後からピストンを押し込む方法では入らない。
・ピストンを先にシリンダ―に入れ、その後ダストブーツを被せ入れる方法もダメ。
・ピストンやゴムブーツにグリスは塗らない。滑ってしまい入れる途中でブーツがずれて外れる。
  →ピストンとピストンに接するブーツ部分の油分はしっかりふき取る。

 

上手くいった手順
①ピストンの先端にゴムブーツをセットする。なるべく端にブーツをセット(黄色線のあたり)

②ピストンの端にブーツが入った状態を保ちつつ、ピストンをシリンダーに当てる。
③その状態でシリンダーの溝(矢印部分)にブーツのシリンダー側の端を樹脂のヘラなどを使い、部分的に少しずつ押し込んでいく。

 

④青色矢印の付近で樹脂のヘラを使い、キャリパーの溝に押し込んでいく。
⑤ブーツが溝に入ったら、少しずつブーツを回転させ、青色矢印の位置で全体が溝に入るまで押し込んでいく。
 (赤矢印部分だとうまく溝に押し込む事ができないから回線させる。)
以上、手順は自分でやってみて、うまく行った時のことをメモしています。
おそらくもっと効率の良い方法もあるのでしょうが、今回私がやってみてうまく入ったのはこの方法でした。
今回しっかりメモしたつもりですが、また次回ここをメンテナンスする際にこの手順を思い出せるでしょうか?自信はないですね。 

 

完成。
難関のブーツセットも終わり、その他ゴムパーツも組み込んで、使用できる状態まできた左リヤキャリパー。
最後に、今回この予備キャリパーを作るのに要した費用を簡単に計算してみました。今回は中古キャリパー左右、新品ピストン、小物新品パーツ、シールキット等で、合計すると4万円くらい掛かってしまいました。

 

ネットで検索するとNA8Cに適合するリヤキャリパーのオーバーホール品も何点か出品されています。
基本的にはキャリパーの返送が必要のようですが、これですとO/Hの手間もかかりませんし、費用も今回より安く済ます事が出来そうです。
今回私の行った方法は費用面で少し多く掛かってしまいますが、自分で状態を確認した後、納得できるパーツで整備が出来ますし、中古キャリパーの予備が1セット増え、その後の整備性が上がるというメリットがあります。
仮にこれを新品で交換するとなりますと、左右で軽く10万以上掛かってしまうのですから、まだ安価なのかもしれません。
ブレーキは絶対に定期的なメンテナンスが必要な部分です。お財布と相談し、現在のキャリパーの状態を見ながらメンテナンスを行う事が大切かと思います。

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